過去の経験を使うことデメリット
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演技で過去の経験を使う?

演技をするとき、役を理解する時、あなたは「自分の過去」を使っていますか?

それとも「その状況をしっかりと落とし込んで」演技をしていますか?

この差は演技において本当に「大きな差」となって現れます。

実際、養成所や専門学校でも「過去の経験を使う」ということを教えられることも多いです。

レッスンの中ではよく話題にあげていますが、演じるときに“自分の過去を引っ張って演じるスタイル”しかできない人は本当に気をつけてください。

自分の過去を使う例

例えば、「身内が亡くなって悲しくて泣くシーン」があったとしましょう。

こういうとき「過去自分が悲しかった出来事」を思い返すことによって、「悲しい」という感情を引き起こせ!とダメ出しされることや、アドバイスされることがあります。

その時にあなたが「恋人にフラれて悲しかった」という自分の経験を使って「悲しい」という感情を呼び起こす、というようなことをしていませんか?

例えば、似たような状況で「祖父母が亡くなって悲しい」過去の経験とか。

他にも、「志望校に落ちた」「友達からいじめられた」など、いろいろな負の出来事と感情があるでしょう。

 

それを思い出し、呼び起こし、それをそのまま演技で使う。

そういうやり方を「良し」とする人もいますが、僕はあまりオススメしません。

1.状況に合わない

まず最初に、「与えられた状況と合わない」ということが挙げられます。

確かに「泣く」という現象を引き起こすことが、そのシーンで求められているとしたら、目的は達成しているように思えます。

ですが、「過去の似たような経験」または「似たような感情の経験」から呼び起こされたされた表現は、実際の台本の状況とは違うため、観ていて違和感が生じます。

同じように泣いているのに、「なんか変だな」とか「なんか違うな」という印象を与えてしまうのです。

そんなのわかるの?って思うかもしれませんが、そういう感性を持っている人には、しっかりと違って見えるものなのです。

逆に言えば「そんなのわからないだろう」と思って演技をしているのであれば、「演技で嘘をついている」ことにしかならないので、きちんと演じられるようにしていきましょう。

2.演技の集中が切れる

2つ目に、演技そのものに「自分の過去の経験」を呼び起こして感情を作る場合、シンプルに「集中」が切れます。

今、目の前で起こっていることを「無視」して、一度自分の中で過去の出来事に注意を向けるわけです。

つまり、この方法を使っている限り、あなたの演技は途切れがちで、一貫性がないように受け取られるのです。

 

それだけではなく、セリフをやりとりしている相手や、今繰り広げられている状況を無視するということは、「独りよがり」な演技をしていることになります。

また、演技をするときは「マルチタスク」になります。

ただでさえ大変なことをしているのに、「自分の過去の経験」を使おうとしているのは、自ら余計なタスクを増やして演技をさらに「困難」にしているのです。

3.演技が楽しくなくなる

3つ目に、「自分の過去の経験」を使って演技をする場合、そのままでは「演技が楽しくなくなる」「演技そのものが嫌いになる」可能性があります。

これは特にネガティブな感情を「経験」から呼び起こそうとする場合に、悪影響が想像できます。

演技をするたびに、あなたにとって辛い出来事、言ってしまえば「トラウマ」のような出来事(そのことの大きさの程度はあれど)を思い起こすわけです。

それは、本来であれば、心の中に閉まって蓋をしておきたいような出来事かもしれないですし、思い出したくもないことかもしれません。

 

でも「演技のために必要だ」と思って、その蓋を無理やり開けて、演技で使おうと思うと、トラブルに繋がります。

演技そのものが「トラウマ」を想起させる要因になってしまい、演技に関して興味を失ったり、楽しくなくなったり、嫌いになってしまうでしょう。

最悪の場合、精神的に不安定になって、日常生活に悪影響を及ぼす恐れもあります。

演技を生業にしていきたいのであれば、「過去の経験」から感情を呼び起こしたり、過度に役作りに盛り込むことは避けた方がよいのです。

自分の過去の経験を使う=代用の演技

過去の経験を使うのは、あくまで代用であって、本来の演技とは少しズレたものです。

ただし、あなたが演技初心者なのであれば、代用の演技からスタートするのは、「とっかかりを理解する」というためにも必要なことかもしれません。

養成所や専門学校で、この方法を指導で使うのは、「入口」として演技をしているときに感情が動いたり、役を理解するのに役に立つからでしょう。

 

ただ、それでうまくいったからといって「それが全てである」と思わず、ちゃんと演技と向き合うことが必要です。

あくまで代用のレベルでの演技表現であって、本来の「その人物としての生きること」を目指すのであれば、そのままではうまくいきません。

理由は、前の項で挙げたとおりです。

 

台本を理解して、役の人物を理解する。

その土台がなければ、演技にはなりません。

逆に言えば、それができるようになれば、今目の前の状況を使って、ちゃんと演技できるようになります。

ぜひ、魔法のキーフレーズを意識してください。

「架空の世界で、一人の人物として、真に生きること」